快適な住環境に建つ16世帯の賃貸住居つづき屋根の集合住宅

2023/Apartment

「 勾 配 屋 根 の 集 落 」

京都と大阪をつなぐ阪急電車京都線の西向日駅から徒歩5分の利便性の良い立地に16世帯の賃貸住居とクライアントのオフィスを建築した。

閑静な住宅地が広がる西向日駅前には、昭和初期の開発により整備された美しい桜並木が街を覆っていた。市街地からは少し距離がある場所ではあるものの、ここにしかない魅力を充分に感じることが出来た。

敷地は南北方向に細長く、西側の阪急沿線と北から南へと蛇行する道路に挟まれるように位置していた。360°全てが建物の顔になりえる立地条件であるため、コピー&ペーストの単調な外観ではなく、其々の個性の集合体のようなイメージにすることで、周辺の低層住宅との調和を図ることができるのではないかと考えた。

配置計画としては5.1m間口のチューブを敷地形状に合わせてぐるりと配置している。それをクライアントの要望である40m2程度の住居になるように、切り分けたことで平面上の様々なバリエーションが生まれた。さらに、1階は半地下、2階にはロフト付やメゾネットタイプなど断面方向にもバリエーションをもたせることで、SOHO利用も可能な個性豊かな16室の住居が出来た。各住居は外の開口に加え、敷地センターの庭園又はライトコートに面した内の開口などから光と風を取り込むことが出来る。

構造体は電車の騒音を考慮し鉄筋コンクリート壁式構造とした。外壁は針葉樹合板を型枠に利用した打ち放し仕上としている。チューブ内にバルコニーやヴォイドなどの外部空間を組込むことで、外観に奥行きをもたせると同時に沿線からの視線を遮る役割をもたせた。

建物が道路に沿うように配置されているため、1階の大半をピロティとし周辺環境への圧迫感の軽減を図った。レンガ敷の半屋外、屋外空間や庭園といった住人の共用空間は透過性のある亜鉛メッキを施したエキスパンドメタルによりセキュリティを確保しつつも、街への連続性が生まれるように配慮している。共用階段及び外部廊下を3箇所に分散、コンパクトにまとめることで高いレンタブル比を維持しつつ使える共用空間の捻出に力を注いだ。共用空間は入居者が外部専有部のように自由に使うことが出来るため、そこでの住人同士の交流や、場合によって地域に開放することで街のパブリックスペースとして利用することもできる。

住む場所と働く場所の境界線が曖昧になりつつ現代社会において、多様な変化に対応できる集合住宅のあり方を考えた。

この全長80mにもなる一つづきの屋根の下で、これからどのような交流が生まれ、街との接点を生むのか、今後の使われ方に期待したい。

created by dji camera

architecturephotoに掲載されました。

TECTURE MAGに掲載されました。

DATA

竣工
2023/03
用途
共同住宅
構造
RC造
階数
2階建て
企画
アリアナ建築設計事務所
意匠
アリアナ建築設計事務所
構造
banana lab
施工
志水工務店