都市の渓谷に建つ ”安堵” の空間阿倍野の家

2024/house

安藤忠雄の代表作である「住吉の長屋」は3軒長屋の真ん中の1軒を切り取り、そのわずかなスペースに豊かな空間が計画されました。そして、今回の計画地も同様、対面道路に挟まれた3軒長屋の真ん中に幅3.9m×奥行18mと「住吉の長屋」よりもさらに細長いスペースが残されており、西の2階建てと東の3階建て(建替)の間に残された空間は、まさに都市に設けられた“渓谷”のようでありました。

そこで、旅行やアクティビティが好きな仲良し家族が家に求めるもの、それは、ビルトイン駐車場の他に家財を適宜納める場所、省エネで家事がこなせる動線計画、それらを満たすホテルライクな暮らしでした。必要諸室から建物は敷地いっぱいに3階建てのボリュームが必要になり、南北の道路面に玄関とビルトイン駐車場をそれぞれ計画した場合、東西も隣家の壁面で閉ざされた1階には光の入らない居室ができてしまいます。この問題を解決するため、建物の真ん中に1・2階をつなぐ大きな吹抜けを設け、2階のリビングを介して1階のダイニング、キッチンへと光が差し込む計画としました。吹抜けに設けた耐力壁を兼ねたシンボリックな収納コア、その隙間から漏れる優しい間接光が優しく室内を照らしてくれます。さらに、吹抜けから上部へと建物を貫く階段は屋上のペントハウスまで到達し、トップライトから差し込む光と、抜け感で室内空間を安堵感で包みます。角やくぼみ、隙間や穴などは一見窮屈に感じるものですが、適切に外部とつながりをもたせることで、それらの囲われたスペースは人が本能的にやすらぎを感じる場所へと代わります。アクティブな家族が帰り、心休める場所。この場所にしか出来ない特別な空間ができました。

DATA

竣工
2024/05
用途
住宅
構造
木造造
階数
2階建て
企画
意匠
アリアナ建築設計事務所
構造
アスコラル構造研究所
施工
沖田工務店